4-1「過去世の記憶」
前回 パート3-2↓
ダヤールター
1
むかしむかし、インドの小さな町のはずれに、大きな河が流れていました。その河岸に一人の少年が住んでいました。
少年は、幼いころに両親を亡くしたのか、あるいは捨てられたのか、とにかく、みなしごでした。
少年は、泥棒をして暮らしていました。家もなく、食べるものもなく、着るものもなく、仕事もなかったからです。
ですから、町の人からはとても嫌われていました。
町の人たちは、いつも少年を捕まえてとっちめてやろうと思っているのですが、あんまりすばしこくて、いつも逃げられてしまうのです。
2
そんなある日、いつもなら悠々と泳げる河が、前日の雨で水かさが増し、少年は河に落ちて溺れてしまいました。少年がいくら助けを求めて叫んでも、通りかかる人は「いい気味だ」「ばちがあたった」と知らんぷりでした。
3
そこへ、ずいぶん年老いた一人の立派なお坊さんが通りかかり、すぅっと河に入ると、老人とも思えない力で少年をぐいっと抱きかかえてあがってこられました。驚いた少年は息も絶え絶えにお礼を言いました。
4
お坊さんは、眉ひとつ動かさず、しかし、とても、とても暖かいまなざしを向け、
「あなたは、人にやさしくありなさい。」
と一言だけ言葉を残し、たくさんのお供を連れて去っていきました。
少年は、人にやさしくあるという言葉の意味が理解できませんでした。生まれたときから人にやさしくされたことなどなかったからです。
食べるために奪い、生きるために嘘をついてきました。
「人にやさしくして、夜の寒さをしのげるもんか。人にやさしくして、腹がふくれるもんか。おれたちゃ、油断したら、すぐに死んじまうんだい。」
人のために何かするということが、少年には理解できなかったのです。
5
よく晴れた日、いつものように泥棒をしようとうろうろしていると、2人の女性が頭に荷物をのせて歩いてきました。少年は荷物を奪ってやろうと思ったのです。
岩陰に隠れて女の人を待っていると、目の前でつまずいた女の人が頭の荷物を全部落としてしまったのでした。
少年にはまたとないチャンスでした。
6
ところが、それを見た少年は、自分でもどうしてそうしたのか、わかりませんが、とびだしたとたんに散らかった荷物を全部かごに入れて女の人に返したのです。
女の人は、美しい笑顔で「ありがとう」と言いました。
7
少年の心は、今までにない何か不思議な気持ちでいっぱいでした。
胸が暖かくて苦しくなって、涙があふれてきました。
夜の寒さをしのぐより、おなかいっぱい食べるより、少年はうれしかったのです。
少年は思いました。「これが、やさしくするってことなのかな?」
8
少年は駆け出しました。少年は、「やさしくできました」とお坊さんに伝えたかったのです。少年は、道行く人にお坊さんの行き先を聞きながら、何日も走り続けました。
少年の足の皮はむけ、血だらけになっていました。それでも、何日も走りました。
9
やっとお坊さんのところへたどりついたとき、お坊さんは、たくさんのお弟子さんと、動物たちに囲まれながら、安らかなお顔で横たわっておられました。
お坊さんは、涅槃に入られた後でした。
10
少年は駆け寄って泣きました。大声で泣きました。
やがて、少年は、お坊さんの教えを学び、たくさんのみなしごに伝えていこうと決意したのです。
11
修行に明け暮れていたある日、少年は、南インドへのたびに誘われます。
いよいよ、たくさんのみなしごにお坊さんの教えを伝えてまわる日が来ました。
少年は、みんなとともに旅立ち、たくさんのみなしごに、お坊さんの教えを伝えてまわったということです。
これ、何のお話ですか?
私が瞑想をしていて思い出した、自分の過去の人生です。
すごい!
あぁ!
だから、盗み癖があったり、仏教の絵本をみて泣いたりしたんだ!
「やさしくしないとっ!」っていう強迫観念みたいなものも納得できますね!
やろ?!
そうやねん。自分でもめっちゃ納得したわぁ。
すごいなぁ!
もしかしたら、私のアトピーとかもそういうところに原因があるのかも知れませんよね。
可能性はあるね。
そうかぁ。
毎日瞑想する習慣をつけて、「いい気分」で過ごすようにしようっと!
つづく
最終回 パート4-2↓